人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

SAKURA千年紀

あさきゆめみし

源氏物語といえば紫式部が千年前に書いた恋愛小説である。


現代でも貴重な文化資料とされる一方、色んな漫画やアニメ、ゲームに利用されることも多いと思う。
というのは、ネタが面白いからだと私は勝手に思ってる。


現代にも軽く通じる貴族同士のドキドキ恋愛ライフがそこにある。キャラの数も多い。
まともに捉えるとどうやら色々式部の思惑などが絡んだ、世の無常を語ったものらしいが、まあドキドキ恋愛ライフでいいじゃないかとまた勝手に思っている。私は哲学に興味はないので、当時の女性のようにミーハーな気持ちで読みたいのだ。

当時の女性の読み方なんて知らんがね。


与謝野晶子、瀬戸内寂聴、様々な方に翻訳あるいは独自の描き方で源氏物語は再生を繰り返し、漫画ですと大和和紀さんの「あさきゆめみし」が超有名である。


私この方の源氏物語が一番好きだ。おそらく源氏好きで「あさき」を読んでない人いないでしょう!
建物から単から、調べに調べて手抜きせずに当時の世界を再現し、ところどころちょっとオリジナリティが加わった少女漫画らしい台詞やシーンが病み付きにさせられる。
なにせ、他からの情報に触発されて泣かない私がちょっとウルッと来た程。
そんなシーンがいくつかあります。


■「夕霧と雲居の雁」


ここはもう大和さんに限らず色んな源氏でも私が一番好きな時期。
幼馴染みの雲居の雁と元服をきっかけに引き離された夕霧が、大体18歳くらいまで(絶世の美貌と持て囃されながらですよ?)雲居の雁を思い続けて独身を貫く。当時18歳で未婚ってちょっと遅いくらいで、夕霧さんクラスともなると他から一杯美味しい縁談が転がりこんでくるのに、それを突っぱねて雲居の雁一直線。
だから結ばれた時は読んでるこっちもホッとするし、感動するんだなあ。

「世の中には綺麗な人が沢山いるのに…僕にはあの子が一番綺麗に見える」

これ原作にはない台詞だけど誠実で一本気な夕霧っぽくて好き。


その後、なんやかんやでやっと結婚できることになったのに現れた夕霧に雲居の雁がキレるシーン。これも原作だとおそらく素直に万歳三唱で終わってるんだろうけど、大和版雲居の雁は女の子してまして(原作がしてないとかいう意味では決して…!)。


「あなたは変わったわ…!あなたは今では私をお父様から獲得する賞品みたいに思ってるわ!」


素直で強気な雁らしさは損なってないし、上手に動かすなあってまた感動した。
その後「悪かった…」とか言いながら大胆に踏み込んで几帳ごと雁を背後から抱き締める夕霧に成長した男を感じてテンション&感動が最高値極める。
Hhoooooo!!!

残念ながら十年後の二人はすっかり家庭のオカンになってしまった雲居の雁と、今頃他の女に興味出てきた夕霧とで擦れ違いが起こって別居状態に。続編「夢の浮き橋」ではマメな夕霧が雁と落ち葉の宮とを一日ずつ交代で通っているというきっちりした情報が入って何やら釈然としない。そこに愛はあるのか?ここを大和さんはさりげなく「やり直してみよう、雲居の雁と…」と夕霧が黄昏るシーンを挟んでくれている。


■「女三の宮」


女三の宮って本当に描くのが難しいと思うんだ。自我のないお人形さんみたいなお姫様という設定らしいんだけども、普通に泣いたりする場面もあるし、源氏とはどう接してたのかとか、出家の決意のシーンとか難易度高い。


彼女の成長を自然に感じることができた。柏木にも少し救いのある描き方だったし、なにやら老人の嫉妬に渦巻く業深い源氏にもはっきりと意思を突きつける爽快な一幕もあって、好きだねえ。女三の宮。


「本当に愛されるとはどういうことか、あの人が私に教えてくれたわ」

ウホッ

「この世でただ一人わたくしを愛して一人きりで逝った…可哀想な人」

ウホホッ

「あなたのお言葉はうわべだけのお優しさ…わたくしへの愛などではありません」



源氏ザマァ。とか言いたいけど源氏物語好きとしては源氏嫌いになりたくないから黙っとくね。


■「桐壺」

桐壺の更衣。諸悪、というと言い方は悪いが光源氏のアレな部分を作り出したお母様。
この人はイジメられてとっとと死ぬ運命にあるのです。そこに細かい説明は不要で、貧乏娘が寵愛されて子供生んでから死ぬ。何せ主人公が光源氏だからオカンが死んでくれないと始まらないの。
なんと大和さん。いきなりのオリジナル展開で桐壺と帝の馴れ初めからスタート。でも、最初って大事よね。それまで無色透明で、好きなキャラに絶対名前が上がる筈のない桐壺が愛く見えちゃった。



■「空蝉」


正直、私夕霧や薫といった子供世代が好きなので、源氏の若かりし頃のスキャンダルあんまり興味ないの。空蝉は源氏と全く関係のない人で手垢つけられた最初の被害者的な感じで物語の助走つけてくれる人。
方違えで紀伊の守の家にお邪魔した源氏に襲われて、二回目は着物を脱ぎ捨てて逃げた様が蝉の脱皮みたいだと。
ま、それはいいんだよ。


空蝉は伊予の介という地方任官の男と結婚していて、そいつがめっさ年上でオヤジ。
都や若い貴族への憧れを持ちつつ、源氏と関係したことで余計に伊予の介との運命を感じるシーン。当然オリジナルだと思います。


「伊予の介、私貴方と一緒に年をとっていきたかった」


「この人と一緒になれたらどんなに素敵だろう。でも伊予の介のあんな後ろ姿はもう見たくない」



空蝉にここまで感情移入して描けるって凄いよ!さらっと終わる一話キャラのお姉さんですので。



こうして振り返ると私は源氏の直接のエピソードには感動しないようですね。

いや、しかし大和さんはそんな光源氏さえもちょっと可愛い貴公子、年をとればちょっと笑えるオッサンにまで仕立て上げる魔術師で、本人も源氏に肩入れしながら描くようにしていたというし、源氏、うん、まあ、悪い人ではない。

こんな書き方では伝わってないだろうけどとにかく素晴らしい。

絵も上手で超美麗なのでそこも見所。
ついでのようで申し訳ないけど小説なら田辺聖子さんがおすすめで、大和さんも田辺さんの小説を読んで少し影響を受けたらしいです。



では
by kumatalow | 2013-09-21 22:52 | 漫画・アニメ