2015年 10月 09日
紫式部の欲望/酒井順子
著者はあの「負け犬の遠吠え」が話題を呼び、更には負け犬という言葉で流行語大賞をとった酒井順子。このバックボーンだけでなにやら拗らせフェミニンな匂いがぷんぷんする。女であることにコンプレックスを持ちつつ女であることに誇りを持ちたそうな女性エッセイストの匂い。そんな女性の視点から見る紫式部の掘り下げなんて大変だ。どろどろした女の妄執とか、女の嫌なところアタシわかっちゃってんのよ的な内容になってるんじゃないか。
実は紫はこれこれこんな思いがあったからこういうエピソードを書いちゃったと思うんだよね~と、源氏物語好きなら一度はよぎりそうなことを、もっとリアルな女の目線から紐解いてある一冊であろうと私は目算を立てた。だからってなんだって話だが、つまり多少のウザさを覚悟したということである。
ちょっと違った。一言で言うと物凄く面白かった。
勿論「紫はこんな思惑があってこのエピソードを書いちゃったと思うんだよね」というドンピシャな内容なのだが、それに対する裏付けとして、紫式部日記からの引用、更に原文を読んだ上で、それらを上手く引き合いに出して、ひねくれのない素直な解釈で、「そうだったんじゃないか」とよぎったところを丁寧に解説してくれている。
たっぷり女性目線の紫式部像でも、そうだったんだろうなと思わせる考察で読んでいて面白い。更にはこれを読むと私も原文を読んでみようかとか、紫式部日記読んでみようかという気にさせられる。
私も買ったきり読んでいない紫式部日記があるから、再チャレンジしようと思う。
とてもいい本に巡り会えた。
by kumatalow
| 2015-10-09 16:03
| 書籍