2015年 10月 09日
シグルイ
と言ってもシグルイは15巻とキリのいいところで完結してしまっているからハマッてもそれっきり、読んだらしまいになるのだが。
確実に私の好きな漫画5本の指に入ったと言いたいけど軽々しく入れたりしたら、虎眼先生みたいに指を増やさないとやっていけないかもしれないから一応数えてみる。
1:ライアーゲーム
2:GANTZ
3:あさきゆめみし
4:ハイキュー!
5:いぬやしき
やべ、普通に足りない。
シグルイは、確実に私の好きな漫画10本の指に入った。
多少人を選ぶ装丁である。血みどろで、ムッキムキの筋肉から零れる内臓。シグルイはしょっちゅう妄想で臓器を発射するので無駄にグロい。
ムキムキ筋肉から臓器をぶら下げて、キリッと剣を構えるふんどし男が好きな方にはおすすめ。
南條範夫氏の「駿河城御前試合」という小説の第1話、「無明逆流れ」を山口貴由氏が漫画にしたもので、本来40ページほどしかないエピソードを山口氏がひたむきに脚色加えまくって15巻まで続いた。
いまいちピンと来なければ内蔵飛び出るスクライドだと考えて貰ったらいい。これは男と男の戦いなのだ。片や出自に対するコンプレックスを傷つけられ、片や道場の師匠仲間婚約者を奪われて復讐に燃える。やや動機の比重が違い過ぎる気もするが、とにかくそういうことで二人は手足を失いながらついに駿河城御前試合にもつれこむ。武家社会を少数のサディストと多数のマゾヒストで構成されると冒頭に謳う通り、マジでどちらかしか出てこない。
こういうと熱い真面目な物語に見えるのに、いざページ開くとツッコミどころが百を越える。いや、でも本人たちは至って真面目だし、でも、おかしいよ気付いて……。
シグルイはこうやって熱い展開に胸踊らせながらツッコんで楽しむ漫画なのだ。
目が離せないダブル主人公のキャラクターも秀逸である。
■虎眼流の忠犬藤木。
あだ名は貝殻野郎(命名:伊良子)。寡黙でストイックなザ・主人公と見せかけてトチ狂った精神を隠し持つ。トチ狂っているのでトチ狂った虎眼流にぴたりとマッチし、伊良子が来るまで師範代としてブイブイいわせていた。
ゆくゆくは跡目を継いで娘の三重のお婿さんになるだろうと言われ、本人も涼しい顔でその気満々だったのに伊良子に座を奪われて実にストイックに着々と狂気をたぎらせる。重度のコミュ障で当然空気は読めない。
お世話になっている家で慕ってきた少年の指を撥ね飛ばして謝りもしなかったり、病み上がりを心配してくれた人に対して「伊良子を倒す方法思い付いたよ」といきなり切り出し、礼も言わない図々しさ。伊良子を倒せるとなったら唯一美しい微笑みを見せるも、倒した後は何が不本意だったのか突然キレてぶんむくれる。
そんな彼の弱点は「侍」と「三重様」。三重様の寝室にこっそり海でとってきた貝殻を(貝殻野郎はこうして生まれた)忍ばせたり、不器用なプロポーズしたり、お粥あっためて待ってたり、なんとなく三重に対しては萌えを感じさせる初奴。
カッコつけて相手の顔面を殴り付けた結果手にバイ菌が入って化膿させる
■稀代のイケメン伊良子
ある日突然虎眼流に道場破りにやって来た美青年。彼の目的は道場に入って地位を築いて侍の一番高い場所へ上り詰めること。下賤が故に侍に対して愛憎入り交じる感情を持っており野心旺盛な伊良子が、わざわざトチ狂った虎眼流をチョイスしたのは偶然である。虎眼流には跡継ぎがおらずいるのはメンヘラ娘一人だったのも偶然である。野心旺盛性欲旺盛、町の娘は俺のもの、虎眼のメンヘラ娘も俺のもの、ついでに虎眼の下げマン愛人も俺のもの。貝殻野郎が恨みがましくこっちを見れば「若先生と呼べ」などとわざわざ上から目線で反感買いまくった結果、道場の誠意ある対応によって両目を潰される。このとき読者に選ばれて自業自得で賞を受賞。
そんな彼だが藤木よりずっとマトモである。わりと早い段階で「なんだこいつら!」って思ってるのに何年か居座ってちょっと仲良くなっちゃったり、脇はがら空きの模様。殺人鬼へと変貌したのち、ふと「俺って藤木のなにが嫌いなんだっけ」と物語の折り返し地点で急に嫌な思い出がぶり返して憎悪をたぎらせる面倒臭い性格。
求められてもいないヌードを披露することに定評がある。雨だからって他人の家の廊下で勝手に全裸になる程には露出狂。彼の弱点は「下賤」と「ママ」である。
他にも死んだのに筋肉だけで歩き回るゾンビやら鯉を丸かじりしちゃう師匠や、ふたなり娘など、個性的かつあまり意味を持たないキャラクターも多数登場するシグルイ。
興味のある方は是非是非。