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SAKURA千年紀

乾くるみ【嫉妬事件】※ネタバレ注意

 乾くるみ氏の【嫉妬事件】読了。

 本当は氏のデビュー作【Jの神話】を読んでみたかったのだが、近隣の図書館には在庫がなく、その後立ち寄った本屋でせっかちな私はオチを先に見るというあるまじき行為をしてしまったのでお流れになった。買わなくて良かったと思っている。


 さて、嫉妬事件あらすじ。

 城林大学ミステリー研究部は、毎週土曜日の午後に部室に集まって、部員が書いたミステリ小説の犯人当てをする定例会を催すことが決まっていた。現部長の佐野──『僕』はいつも通り部室に入ると、室内からは妙な臭気が立ち込めていた。
 本棚の上に置かれた「それ」は一体誰が置いたのか?なんの目的で?



 以下、ネタバレ注意。














 読んだ直後、私の心は非常に荒れ狂った。有り体に記すと、ふざけるないい加減にしろ、下品、最低、つまらん、こんな物で金を取るんじゃない、下品、女をなんだと思っているんだ、下品、下品、下品、なんじゃそりゃ、つまらん!



 何故こんなにも下品下品と連呼するかというと、本棚の上に乗っていた異常な臭気を発するブツというのが人間の便だからである。

 この話は洒落でできている。嫉妬事件は感情の嫉妬と、【便Shit】とかけているし、犯人の女の台詞「ジ・エンペラー」と自演をかけている。

 便をめぐってああでもないこうでもないと推理する話だから、当然便などとは程遠いもっと端的な単語で表現されるのだ。それも1回じゃない、何度も。

 さすがに食欲が失せた。

 これで面白ければ文句はあるまい。だがオチときたら、最初にある程度予想できる犯人の通りであり、動機に関しても、乾氏の大好きな「男の想像もつかないようなインランなことを考えている女」そのものだったから嫌で仕方なかった。

 便が自分の頭に落ちてくることを想像して濡れる女ってなんじゃそりゃ。犯人がわかったところでカタルシスもなにもない、なにひとつとして残らない。
 調べてみると、この便事件は京大のミス研で実際に起きたことだそうな。乾氏もはじめから冗談のつもりで書き記した軽いアンチミステリのようだが氏の冗談は病的につまらないのである。


 おまけで、ミス研の部員翔子が定例会のために書いたとされる作中作も収録している。

 わざと文体を変えてなかなか面白いのだが、最後の方のミステリってのはこうで、こうだならこうなんじゃ、という博士の説教じみた台詞が文句を言うなという風に聞こえた。

 タロットシリーズの中でも天童がなかなか出しゃばるから天童好きの人にはお勧めだ。



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by kumatalow | 2015-11-10 19:03 | 書籍