人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

SAKURA千年紀

米澤穂信【リカーシブル】

 【あらすじ】

 父の犯罪と失踪を機に、義理の母と母の連れ子の弟・サトルと共に、常井町にやってきた越野ハルカ。友達になったリンカの手助けで徐々に町に馴染んでいくハルカであったが、未来を予言するようなサトルの言葉をきっかけに、高速道路誘致に期待をかける町人の願いと、タマナヒメの伝承を知る。

 母と弟との関係、町で勃発する奇妙な出来事にハルカはたったひとりで立ち向かう。







 あらすじ下手くそです、あしからず。


 民間伝承、神話の類と聞いて真っ先に思い浮かぶのが懐かしのホラーゲームSIREN。あれのアーカイブのようだと思って読むと倍楽しい。

 神様は本当にいるのか?という疑問を父を待つ少女の願いと、町ぐるみの狂気めいた希望の両点から迫っていく。青春×怨念×ミステリー。

 結局サトルが過去・未来視ができたことには原因があったんだけど、真相にたどり着いたときの背筋が凍る──そうだったんだ!と思わせる持っていきかたが秀逸。また語り手のハルカがいちいち流されることなく冷静に分析して、自分の考えで行動するからまったくストレスなく紐解いていくことができる。


 一方で、齢13にして、自分が生きるために、冷静に計算高くあろうとするハルカの姿が切ない。彼女が現実を受け止めるたびに痛々しくて可哀想になってくる。


 タマナヒメの力は存在するのか否かという点に関してはどちらとも取れるような、オチの付け方は宮部みゆきの「楽園」にちょっと似ている。

 おそらくそう若くもない男性が書かれていると思うのだけど、繊細な思春期女子の心をこうも簡潔にリアルに描くかよ。

 ラスト、ハルカの力強い台詞に胸を打たれました。


 リカーシブルというのは造語だそうで。「繰り返すこともできる」という、わざと曖昧な意味にしたんだって。
by kumatalow | 2015-11-20 11:53 | 書籍