【伊坂幸太郎】ホワイトラビット
 ハードカバーだからって読みたかった「AX」敬遠したくせに、「ホワイトラビット」のハードカバーを買ってくるというおかしなことをしてしまった。ハードカバー嫌いです。重いし読みづらいし紙が固いし、個人的にいいことひとつもなくて滅茶苦茶嫌なんです。でも文庫を待つほど我慢ができる性分でもなくて、何か買って帰りたいと思った日はその通りにしなければ気が済まない。結果一番中途半端をしたという。

 グラスホッパー、マリアビートルの殺し屋シリーズを続けて読んでから、一旦離れて久しぶりの泥棒シリーズになります。泥棒シリーズというか、黒澤シリーズ。黒澤はもう伊坂好きにはたまらん人気キャラクターでしょうね。私も心が躍った。
 とにかく黒澤ってかっこいいんです。落ち着いた壮年の男で、泥棒なんてしてる癖に不思議と頼りがいがあるというか。危なげがなくて、情に厚いというほどでもないのにそこはかとない優しさを感じる。



 一言で言うと、あまり面白くなかった。


 ある誘拐犯、犯ではなくもはや組織として身代金を請求するグループの内のひとり、兎田の嫁が誘拐された。組織の情報を握ってトンズラしたオリオというオリオン座の話ばかりする男を見つけ出さなければ、嫁の命が危ない。オリオ探しの為に仲間に嫁を人質にとられた兎田が、オリオを求めるあまりするつもりのない立てこもり事件を起こしてしまい、それに巻き込まれたある家族とたまたま家に侵入した黒澤、立てこもり犯に立ち向かう刑事たちの群像劇、となる。


 ちょっと失敗だなと思ったのは、発端となる事件の規模の大小が見えにくいのと、ストーリーの単純さに比べて設定がややこし過ぎる。誘拐組織グループの内部のいざこざという特殊な環境、結局ほとんど出てこずで、本当にオリオン座の話ばかりするのかも怪しい人伝でしかキャラが立ってないオリオ。伊坂さんの得意なAだと思ったらB、かと思わせてC。といったような視点の違いや思い込みを活用した叙述トリックは盛り込まれていてそこは非常に楽しめるのだが。

 それ以外は何もかも唐突だな、という印象を受けた。今までにないような、あからさまに挑戦してみましたな文体、唐突な刑事の心情、唐突な立てこもり事件、唐突なオリオン座。やりたいことはわかるけれども、全部バラバラ。残念ながらオリオン座のように綺麗に点と点が結ばれることはなかったようだ。
 終わってみれば長編のわりに語るところも少ない。以前「首折り男のための協奏曲」という短編集を読んで長編っぽい、という感想を持ったが、今回は短編っぽい長編という感想を持った。

 さらに不味いことに、先頭で絶賛された黒澤の登場が物語から新鮮さを奪い取っている。お馴染みの彼の登場で、何だか物語がダラッとしてしまっているのだ。初登場のキャラたちも黒澤の前ではかすむし、黒澤は性格上自分を崩すということはないので、黒澤としてあり続け、期待に応えるのみで何かを越えてくることはない。今回は彼の安心感が物語への甘やかしにしかなっておらず、むしろ黒澤以外の人物でやった方が背筋が伸びた可能性はある。



 その前に読んだマリアビートルが超弩級の面白さだったのも良くなかったかも。あれは本当に面白かった。


 個人的嗜好で言わせて貰うと、作者が先走って「この後彼は壮絶な思いをすることになるのだがそれはまた先のお話」的な書き方好きじゃないのでできたら味をしめないで欲しい。先のお話なら黙っとけやって感じでワクワクもドキドキもしないので。

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by kumatalow | 2018-01-06 01:40 | 書籍 | Comments(0)

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