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映画「いぬやしき」※ネタバレボロクソ注意
 いぬやしきが公開されました。原作も全部揃えたし、アニメも見たし、映画は言うなればメディアミックスの締めです。奥浩哉の漫画は人物の造形がリアルだし、ネタは現実世界に住む人間の異変系だから三次元映えすると思ってた。

 いぬやしきも、現実の中の非現実系。
平凡で取り柄のないサラリーマン犬屋敷が何者かの侵略により身体を改造され、力を使って自身の生きる原動力を見出していく。それに対し、同じく改造された男子高校生獅子神は極めて破壊的な行動で生きる原動力を見出そうとする、色んな面で相反したバトルを描いている。見所は超人的な能力を手に入れたSFバトルなんだけれども、きっかけや行動指針はどこにでもいる普通の人間の心理や渇望なんだ、というところ。両者はけして相容れることもなく、心を許しあえる関係になるにしては年齢も考え方も違う。その二人が同じ結末に違う景色を見ながら進んでいくところに感動した。





 映画は、SFとして成功し、ヒューマンドラマで失敗した。映画の失敗は配役から始まる。木梨憲武は年齢的にはちょうどいいが、家族にないがしろにされ、満員電車に揉まれる無個性サラリーマンには見えない。どこからどう見ても木梨である。あ、あれ木梨じゃない? と指をさされそうな芸能人のオーラを出す、色黒で目力のある木梨だった。原作のチワワみたいな犬屋敷が見たかったし、しかも本職俳優じゃない人にさせるべきではなかった。みなおかで下っ端芸人にイジメまがいのことをしてニヤついている木梨は、どう見ても搾取する側の人間である。普段の顔を消せるほどの技術が彼にはなかった。私はアニメ版で声優を担当した小日向氏を推したい。あの「僕は、犬屋敷一郎だ」の台詞の言い方は秀逸だった。


 犬屋敷よりも中途半端なことをされたなと感じたのは、佐藤健演じた獅子神皓である。
 獅子神は良くも悪くも現代の若者なのだ。若者にしか出せない危うさと狂気と打たれ弱さ、そして透明感を出していかなければならない。

 なぜアラサーがやるのか。駄目だアラサーは。見た目が若いとか演技力でカバーとか、小手先でなんとかなるものではない。教室の場面でも端の生徒から順番にカメラ移動して、最後獅子神で落ち着いたところで、大人が混じってるなと感じた。普段は気にならない佐藤氏でも、獅子神だと思って見ようとすると肌の黒さや目尻のたるみや中年の声が気になって演技以前の話になってくる。

 母さんを慕って泣くアラサー。大学には行かないよとにっこり笑うアラサー。悪役やヒーローにこだわるアラサー。ネットに牙を剥くアラサー。バンッと言うアラサー。
 彼はもはや国民にとってお馴染みの俳優であり、実績も沢山積んだかもしれない。けれど獅子神をやるにあたってそれらがことごとく足を引っ張っていた。

 あとなんで二人とも色黒で鍛えてんの? 改造されるまでは格闘とは無縁の人たちなんだから色白のケソケソで丁度いいのに、いい身体って言って欲しそうに作り上げてくるのやめなさいよ。

 配役の失敗を踏まえ、さらに周囲の登場人物との絡みもテンポが悪かった。原作の犬屋敷は能力を手に入れ、人々を救うことに活力を見出し、わずかではあるが家族からのアタリをスルーできるようになっていく。家族の感謝や尊敬を必要としなくなったので、ちょっと関心が薄れるのである。身内という狭い世界から視野を広げる父親の変化を微妙に感じ取り、初めて父に興味を持つ娘の心の動きとか、あんまりなかった。最後まで悪態ついて助けてもらってお父さんアリガトウしてた。それも二回やり直しててかったるかった。弟はいじめっ子にやり返す描写をカットされ、たぶんまだカツアゲされてる。犬屋敷の関心も家族に向きっぱなしで、終盤の娘のピンチにしか動き出さない様子は、自分の心を寄せた相手以外をゴミのように扱う獅子神と大して変わりがなかった。お前のせいで死んだなみたいなシーンいっぱいあった。


 獅子神周辺は、ぶっちゃけしおんはいらなかったのではないか。彼女は獅子神の中の最後の良心的なポジションになる。彼女の優しさが獅子神の中ではずっと残ってて、皆殺しなどとぶっておいて救いたいという矛盾を抱えるのにすげー良かった。スクリーンの中の彼女は台所で被弾してそれっきりとなり、後日獅子神が思い出すこともない。犠牲者のひとりであって、別に意味はなかったよね。
 最後のシーンわざわざ入れるほど親友との絆をメインにしてるなら安堂だけで良かった。


 映画という尺の都合上、隕石接近はカットされ、二人のバトルに決着を絞ったのはある意味まずかった。やるなら完全にどっちか壊れた方が良かった。原作のラスト。ヒーロー願望強い獅子神は隕石を食い止めることで最終的に願いを果たし、たとえ生き残ってももう大量虐殺なんてしないだろうな、と感じ取ることができる。ところが、隕石もきてないし、ヒーローの座をジジイに奪われてしかも負けて部品だけとっちらけてまだ生きてる! 絶対また復讐に来るじゃん! と思われても仕方のないオチはどうなのだろう。一仕事終えた顔してたけどお前は単純に負けただけでなんにも終わっちゃいないからな。

 言い出せばキリがないのでこの辺でやめとくけど、好きだったところ全部中途半端でがっかりしました。

 はな子と獅子神の父キャスティングは神がかってた。漫画から飛び出してきたみたいだった。


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by kumatalow | 2018-04-22 16:24 | 映画 | Comments(0)
  

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